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2021年4月19日月曜日

「Dの研究」いよいよ推敲すいこう段階へ 柄谷行人「社会運動組織の可能性――「NAM」を検証し再考する」

 📚読書ノウト📚  🌀柄谷行人を読む🌀 

  

Dの研究」いよいよ推敲すいこう段階へ 

  

柄谷行人「社会運動組織の可能性――「NAM」を検証し再考する」  


柄谷行人氏(棚部秀行氏撮影)


   

■夕刊一部50円(税込み)。  

インタヴュー(現代社会・現代思想)。  

  

  

  

 以前も本ブログで紹介したが、柄谷行人の近著『ニュー・アソシエーショニスト宣言』(2021年・作品社)について、あちこちの新聞などでコメントやインタヴューなどが相次いで掲載されている(本稿末参照)。  




 前回紹介した内容などと重複する分が大半を占めるが、本インタヴューの新情報としてはいわゆる「Dの研究」*についてだ。「Dの研究」の「D」とは「交換様式D」のことである。これは柄谷が提唱する4つの交換様式の一つで、未だ実現されざるものである。 


「Dの研究」の連載第一回が掲載された『atプラス』23号。

  

*柄谷行人「Dの研究」現6回(中断)/『atプラス』23号~28号・2015年~2016年・太田出版。「Dの研究」の「D」とは柄谷が『世界史の構造』(2010年・岩波書店)などで展開した「交換様式」の4形態の4番目の象限に当たるものである。  

B 略取と再分配  

   国家  

A 互酬  

   ネーション  

C 商品交換  

   資本  

D X  

   X  

(柄谷『世界史の構造』岩波現代文庫・p.15より図1と図2を接合した)  

 柄谷の交換様式については、手近なところでは柄谷自身のホウム・ペイジ「交換様式入門」が掲載されている。そちらを参照されたい。 

  

 この「Dの研究」は第6回までは雑誌『atプラス』に連載されていたが、突如として連載中止になり、その後長らく連載が中断されたままになっているいわくつきのものだ。 

 しかしながら、柄谷は研究、執筆は継続していて、2018年の段階では「力と換様式」というタイトルになるのではないかと考えられた* 

  

『内省と遡行』講談社文芸文庫版

*柄谷の旧著『内省と遡行』(1985年・講談社)が講談社学術文庫(1988)から同じ講談社の文芸文庫(2018年)へと鞍替えした際に巻末に付された「文芸文庫版へのあとがき」に、この「力と交換様式」という論文名が出されている(文芸文庫版・p.332)。 

  

 実際、わたしは勇み足にもほどがあるが、本ブログにて「「Dの研究」完成間近か?」との誤報を出した。この場をお借りしてお詫びする次第である。 

 さて、その「Dの研究」=「力と交換様式」であるが、インタヴュワーの棚部秀行は次のように紹介する。 

  

すでに推敲すいこう段階にあるという次作も、交換様式と力について扱っており、既刊の『トランスクリティーク』*01年)、『世界史の構造』*10年)と合わせて「この3冊がセットになるでしょう」と話す。(本記事) 

  

*いずれも現在、岩波現代文庫(引用者註)。 

  

言うまでもなく、ここに「自作」とあるのは「Dの研究」、すなわち「力と交換様式」であることは論を俟たない。 

  

  以上のような次第で、ただ単に再び社会運動を起こそう、ということではなく、「交換様式」という理論的支柱が、柄谷本人も、またそれを取り巻く社会的な環境も十分整いつつある中での社会運動組織「NAM」の再考、ということである。 

 推敲段階に入って、実際に上梓されるまでに一体どれくらい日月が要するのか、こればかりは不明ではあるが、いずれにしても今後の「NAM」的な運動の拡大と進展とともに、「力と交換様式」の完成を心より待ちたい。 

   

📕【参考資料】『ニュー・アソシエーショニスト宣言』についてのコメント・インタヴューなど  

  

①柄谷行人ロングインタビュー「今を生き抜くために、アソシエーションを――『ニュー・アソシエーショニスト宣言』(作品社)刊行を機に」/『週刊 読書人』2021年3月19日号・読書人。(インタヴュー)  

②「著者が語る 向こうからくる未来」/『北日本新聞』2021年4月3日・北日本新聞社。(インタヴュー)   

  

  

🐣  

2021/04/19 1:43 

  

🖊1,792字(四百字詰め原稿用紙換算5枚)  

  

  

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