途轍もなく分かり易い
亀山郁夫『ドストエフスキー 罪と罰』
■亀山郁夫『ドストエフスキー 罪と罰』2013年12月1日・100分de名著(NHK出版)。
■BOOKOFF古淵店・ ¥420にて購入。
■テキスト・長篇評論・入門書。
■2021年12月8日読了。
■採点 ★★★★☆。
先年放映されたテレ‐ヴィジョンによる連続講義のためのテキスト。したがって、未読の視聴者・読者でも理解可能のようにストーリーを順に追いかけて、要所要所で問題点なり、展開可能なポイントを講義する形を取っているが、相当平易な書きぶりにも関わらず、もともとドストエフスキーのテキストが持っていた文学的、あるいは思想的なエネルギーが放射され、十分楽しむことができるだろう。
わたしは、たまたま、本書の続篇に当たる『カラマーゾフの兄弟』の再放送に当たって、せっかくだから未読の本書を先に読もうと思い、手に取ったら、余りにも面白く、ではせっかくの機会なので、と思い、亀山訳による『罪と罰』も注文し、先日めでたく読了した。もう滅茶苦茶面白かった。それについては、また別の機会に述べたい。
本書のポイントは、恐らくは筆者の主張は最低限にして、とにかく分かりやすく書かれていることだろう。
とりわけ、有難いのが、各種の図表の類である。まずは物語の進展に合わせて4枚用意された主要登場人物の相関関係図。物語の進展を簡単な年表形式にしたもの。そして、ペテルブルグやラスコーリニコフが獄に下るシベリアまでの地図。もちろんこれらはテレ‐ヴィジョンの放送用にスタッフが作成したものではあろうが、当然下書きをしているのは筆者である。大変重宝している。
当然、本書は放送に合わせて刊行されたテキストなので、その時期が過ぎると原則入手が困難になる。ところが、昨年の暮れに、本書と、続篇の『カラマーゾフの兄弟』の分と、さらには『白痴』、『悪霊』、『未成年』の書下ろしも合わせて合本とし、『集中講義 ドストエフスキー五大長編を解読する』(2021年12月25日・別冊NHK100分de名著(NHK出版))と題して書籍化された。その際、残念なことに、元の冊子に掲載されていたカラー口絵・写真と、筆者の前書き「はじめに」が割愛されてしまったのはいささかならず残念ではある。シリーズとしてのフォーマットの制限があったのであろう。
📓ノート
・「率直であれ」 p.4
・人間が人間であるためのぎりぎりの境界線 p.7
・ピエール・プルードン「所有とは盗みである」。アナーキズムの父と呼ばれた p.14
・1866年 分離派誕生200年、ドミートリ―・カラコーゾフによる暗殺未遂事件 p.18
・黙過という罪 神の沈黙 p.28
・運命の不条理 『ヨブ記』 p.29
・教会分裂(ラスコール) ラスコーリニキ=分離させられた人々=分離
ラスコーリニコフ p.43
・テロルの問題 アレクサンドル二世暗殺未遂事件とラスコーリニコフの老女殺害事件は同根 p.44
・【少女凌辱】スヴィドリガイロフ 過去に少女を凌辱して自殺に追い込んだ スタヴローギンと同じ p.63
・ポルフィーリーは予審判事ではなく捜査担当官と訳すのが正しい p.71
・バッカナリア(どんちゃん騒ぎ) p.73
・★役所をいったん解雇されたマルメラードフが復職できた背景 ソーニャが最初に取った客がマルメラードフの上司の政府高官だったのでは? その時の報酬が銀30ルーブルという破格のものだった。後にソーニャに酒代を無心に来たマルメラードフに渡しのは30コペイカであった。 イスカリオテのユダがイエスを売ったのは銀30枚だった。自分をキリストになぞらえているマルメラードフは実は裏切り者のユダとして娘を売った。マルメラードフはそのことに耐えられず自殺覚悟で馬車に飛び込んだのでは? 文芸評論家清水正の説。P.p.77-78
・ソーニャに殺害のことを告白しようとしてラスコーリニコフはソーニャに殺意を覚える。 P.79
・『罪と罰』は「母殺し」の物語(ロシアのカリャーキンの説)。ラスコーリニコフは母を愛しながら、憎んでいる。母殺し=神殺し 彼は皇帝暗殺という父殺しをしようとして、実は「母」を殺したp.p.85-87
・★スヴィドリガイロフの台詞「一生にいちどぐらいあなたにもお見せしたい、あなたの妹さんの瞳がどんなにあやしく光るか!」p.95
・スヴィドリガイロフは自分に銃を向けるドゥーニャを美しいと感じる p.96
・スヴィドリガイロフの領地はダロヴォーエ(ドストエフスキーの父の領地)
・ラスコーリニコフは結局自分の罪の理由が分からない p.100
・ソーニャはラスコーリニコフに十字架を架ける=十字架に架けられる=十字架を背負う p.100
・ラスコーリニコフは神なきゴルゴタへと向かう p.101
1939字(5枚)
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