このブログを検索

2018年1月21日日曜日

西部邁先生の死を悼む

西部邁先生の死を悼む 







 社会経済学者・保守思想家の西部邁先生が自裁されました。保守派の論客としては、宜なるかなと思わざるを得ませんが、それにしてもとても残念の一言に尽きます。心より哀悼の意を表します。 
 わたしは西部先生の直接の教え子ではありませんし、また思想的にも正反対の立場に立つものですが、特に初期の論著については克明にノートを取り、その理解に努めたものです。 
 TV番組『朝まで生テレビ』での発言、訥々としながら理路整然と発話するその孤高の姿勢に感銘を受け、著書を手に取りました。NHK教育テレビでの『大衆社会のゆくえ』については、その理路の密度の濃さに驚嘆したものです。全くの余談ですが、西部先生がその開講に当たって述べられた「「大衆論」はいささかならず危険な企てである。」*と述べられたなかの「いささかならず」という言はいまだにわたしの文章の定型的な「口癖」となりました。 

*西部邁『大衆社会のゆくえ』/NHK市民大学・1986年・p.4。ただしテレビ放送では「大衆社会をテレビ番組で論ずるというのは、いささかならず危険な試みです」というような発言だったと記憶している。当時わたしの下宿にはテレビはなく、ラジオで音声のみ視聴していた。 

 いずれにしても、1980年代になにがしかのことを考え始めたものたちには計り知れない影響を与えたことは事実です。いわゆる80年代初頭のニューアカデミズムに見られるポストモダン思想に対する一つのアンチテーゼとして、後に書かれる思想史には特筆されるべきです。その学恩の重さに敬意を評しつつ、心より哀悼の意を表します。 
 西部邁先生、安らかにお息みください。いままでありがとうございました。 

2018年1月21日 

🐦鳥の事務所 

0 件のコメント:

コメントを投稿