なぜ笑う?
村田沙耶香「音楽を観て 口元ゆるむ」
妙な設定の夢をよく見る。妙な、というのは現実の経験とはいささかずれるが、全く物理的にあり得ない話でもなく、なおかつストーリー的にも見ている本人が結構楽しめるものだ。実際面白い。
最近は、見ない、というよりも覚えていないのだと思うが、昔はよく見ていた。
そのいくつかはネットにもアップしてある。
先に『コンビニ人間』*で芥川賞を受賞した村田沙耶香さんは、他人が声をかけるのを憚るほどに歩きながら笑っているのだそうだ。なぜ、笑っているのか。音楽を聴きながら歩いていたそうなのだが、彼女は音楽を聴くと映像が浮かぶらしい。例えば「女の子がただ水の中を漂っている」**とか「血の代わりに花びらをを流している人間」**だとか。
*村田沙耶香『コンビニ人間』2016年7月26日・文藝春秋。
**村田沙耶香「音楽を観て 口元ゆるむ」/「村田沙耶香の回遊する日常」/『朝日新聞』2017年5月2日・朝刊「文化・文芸」面。以下ここからの引用は「村田・2017」と略記する。
映像の由来がよく分からないらしい。歌詞とも関係ないようだ。
わたしにはそんなことは起きない*。いや誰にも起きないだろう。さすが小説家である。というよりも人によっていろいろと頭のなかの働きは違うのだなと感心した。
*音楽を聴いていないときでも頭の中で何か音楽が鳴っている、ということはある。
つまり、ここからは勝手な仮説であるが、人間は頭の中で自分自身が楽しめるような娯楽を作ってしまうのだろうか。いや、一部の人間だけがそのような特殊な技を身に付けているのか。……わからん。
ところで、本題に戻ると、村田さんがそのような奇妙な映像を観るというのは、まーいいとして(いいのか?)、問題はなぜ笑うのだ? つまり「宙を見て笑っていたので声をかけにく」*い、というレベルの笑いかたなのだ。いわゆる脳内麻薬のなせる技なのかもしれぬが、客観的には行っちゃっている感じなのだろう。これは怖い、というか面白い、というか純粋に変だ。
*村田・2017。
実のところ、まだ村田さんの作品を一行も読んだことがないのだが、こんな変なことをする人ならきっと面白いに違いない。ぜひ、読んでみようと思った。
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