📚讀書ノウト 〓格闘技を読む〓
UWFとは佐山聡のことなのか?
柳澤 健たけし『1984年のUWF』
■柳澤 健『1984年のUWF』2017年・文藝春秋。
■長篇ノンフィクション(格闘技・プロレス)。
■2020年8月ごろ読了。
■採点 ★★★☆☆。
UWFと言えば、前田日明あきらのことであって、前田日明と言えばUWFである。
しかし、本書の表紙には初代タイガーマスク、いや、彼自身が対総合格闘技戦用に開発したオウプン・フィンガー・グラヴを装着しているからスーパー・タイガーだろうが、佐山聡さとるが描かれている。ここに本書の主題が明示されている。
プロレスと言えば「八百長」とされていたプロレスを本当の意味での真剣勝負の場にしようとしたのは他の誰でもない。佐山聡その人なのである。
だが、残念ながら、佐山の思想に時代と周囲の人々が追いついていかなかった。
佐山はその後、UWFを離脱し、総合格闘技の草分けシューティング(現在・修斗)を創設し、その後、自身の考案した武道「掣圏道」(掣圏真陰流)にまで行きつく。
UWFは名前こそ変える*が、その本流が90年代から00年代にかけての一大格闘技ブームを形成したことは論を俟たない。例えばヒクソン・グレイシー戦に敗北した髙田延彦を「永久戦犯」と批判するものもいるが、ヒクソン戦実現のために用意された「PRIDE」という興業の場がなければ、そもそもその後の総合格闘技の発展はなかったのである。
*UWF、リングス、UWFインターナショナル、藤原組、パンクラスなど。
問題はその総合格闘技の隆盛の渦中には佐山の姿はなかった、ということである。
この問題については、より佐山のサイドに絞った形での追究が必要である。これについては田崎健太『真説・佐山サトル タイガーマスクと呼ばれた男 』 (2018年・集英社インターナショナル)を参照したい。
恐らく、400ページに及ぶ本書をもってしても、UWFの全貌は摑めないだろう。
数多くのUWF関連書を参照するしかない。
以上のように考えてくるとやはりこれは佐山に寄り過ぎている。シューター中井祐樹に始まり、中井祐樹で終わるのもそうだ。付録として「1981年のタイガーマスク」が収録されているのもそうである。就中、表紙が問題である。中表紙の複数の選手が入り乱れている群像こそがUWFには相応しい。
個人的な感想を付け加えれば、そんなにUWFの経営は大変だったのか、という驚きと、それをなんとかしようとした何人かの裏方の苦労が思いやられた。
🐦
2020/08/28 13:20

0 件のコメント:
コメントを投稿