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2020年8月28日金曜日

独自の世界観の強度が半端ない 増田俊也『七帝柔道記』

 

📚讀書ノウト  🥋増田俊也を読む🥋

 

独自の世界観の強度が半端ない

 

増田俊也『七帝柔道記』



■増田俊也『七帝柔道記』2013228日・角川書店。

■長篇小説(青春・スポーツ)

20208月頃読了。

■採点 ★★★☆☆(4点としたいが、未完のため-1)。

 

 既にして死語となりつつある「青春」小説の枠に入るのだろうが、ほとんど女性は登場せず、終始一貫、ひたすら下宿と道場を行ったり来たりして、絶望的な面持ちで柔道の練習だけをしている。さらには、これだけ練習しても、作者自身であるところの主人公が所属する北海道大学柔道部は全く勝てない。万年最下位に甘んじている。

 最後は主人公は怪我をして試合に出ることもなくあっけなく物語は終結する。

 

 内容としては、ただそれだけなのだが、これが滅法面白い。要は青春小説というよりも、ひところはやったスポコン(スポーツ根性)漫画のノリに近い。実際、本書に限らず、増田の代表作は漫画化されているのだ。

 これらが漫画として通用するということは、それは独自の世界観の強度によると思われる。

 そもそも「七帝」とは七つの旧制帝国大学を指し、「七帝柔道」とは旧制高校、旧制専門学校で行われていた寝技に比重を置いた「高専柔道」を引き継いだルールで行われている。無論、世界的に認められている講道館のルールとは全く違っているのだ。

 この題材のの特殊性もさることながら、北海道大学が持つ独特の旧制高校のような蛮カラさや、北海道の自然、そして登場人物たちのユニークさである。

 

 そう考えると題名の「七帝柔道記」はいささか大仰なので「北大柔道部物語」ぐらいが妥当かもしれぬ。

 

 続編の刊行が待ち望まれる。

 

🐓

2020/08/28 15:30

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