日本漫画史上における至高の達成
つげ義春『つげ義春日記』
つげ義春『ねじ式』
つげ義春『無能の人・日の戯れ』
■つげ義春『つげ義春日記』1983年・講談社/2020年3月10日・講談社文芸文庫。
■日記。
■2020年3月22日読了。
■採点 ★★★☆☆。
■つげ義春『ねじ式』表題作・1968年/1976年・小学館文庫。
■短篇漫画選集。
■2020年3月22日読了。
■採点 ★★★☆☆。
■つげ義春『無能の人・日の戯れ』初出・1975年~1986年/1998年・新潮文庫。
■短篇漫画集。
■2020年3月22日読了。
■採点 ★★★★☆。
今春(2020年4月)刊行が開始される完全版全集『つげ義春大全』(講談社)に合わせて、長らく再刊、文庫化が見送られてきた『つげ義春日記』の文芸文庫版刊行を機に手に取った次第である。
正直に言えば、この日記がつげの作品と独立した価値があるかどうかは疑問である。当然ではあるが、つげという不世出の漫画家の作品の「ある程度の」背景を知るにはうってつけの「作品」ではあるが、それ以上ではない。
彼の精神的な病も相俟って、この日記の期間、つげは、呆れるほど仕事をしていない、あるいは、できない。
そこが残念と言えば残念なところだ。
話は余計なことだが、「ねじ式」の冒頭部分をカヴァー・デザインに採用したのは素晴らしい。まさにこのワンカットでつげの名は世界的に知られるところとなったのだ。
惜しむらくは帯を排してカヴァー本体にキャッチコピーを刷り込んだことだ。デザイナーの美意識を疑う。
同時に、過去の旧作も手に取ってみた。
小学館文庫創刊時に二巻本で編集された『ねじ式』と『紅い花』ではあるが、正直、編集に取り留めがなさ過ぎて、筆者の意図がうまく伝わらないきらいがある。
恐らく、つげは「ねじ式」や「赤い花」のような、ある意味では芸術としての文学という意味での「純文学」を志向した(ように見られる)作品で将来的にも、世界的にも名を成すのであろうが、個人的には、例えば「ねじ式」に見られる引用のオンパレードを思わせる高密度の世界は息苦しい。
むしろ、つげの実生活に竿を刺したような、いわゆる「私小説」的な作品の方が、好ましく思える。
「ねじ式」などが描かれた奇跡の2年間の作品群と比較すれば、構成力などにおいて各段に劣っているという向きもあろうが、連作『無能の人』や断筆となった、「最後」の作品「別離」などはつげの、あるいは日本漫画史上における至高の達成だと、わたしには思える。
いずれにしても、詳細は『つげ義春大全』にて。
🐤
2020/03/22
23:57





0 件のコメント:
コメントを投稿