「最後の文芸評論家」加藤典洋の論跡を辿る
ラジオ番組『ねじれちまった悲しみに』明日夜放送
【番組概要】
◆タイトル:『ねじれちまった悲しみに』
◆放送日時:
2019年8月18日(日)19:00~19:55 TOKYO FM・FM長野・Hi-Six(エフエム高知)
Rhythm
Station(エフエム高知)では同日20:00~20:55
◆放送局:TOKYO
FM、Rhythm Station(エフエム山形)、FM長野、Hi-Six(エフエム高知)
◆出演:
小川哲 マイケル・エメリック 上野千鶴子 長瀬海 藤岡泰弘
◆語り:
藤間爽子
本年5月に逝去した加藤典洋の生前刊行された最後の著作は『9条入門』(2019年・創元社)だった。文芸評論家としてのデビュー作が戦後日本文学に投影されたアメリカについて論じた『アメリカの影』(1985年・河出書房新社)だったことを思うと、この符合には加藤自身の問題意識が当初から一貫していることが分かる。戦後の問題を避けては加藤の文芸評論は成立し得なかった。
その思想の根幹を成す『敗戦後論』(1997年・講談社)刊行の際には左右両サイドから徹底的な袋叩きに遭った。おそらくここに加藤の孤高の思想の姿が表れていると言っても過言ではない。
従来の、右は右、左は左の思考の枠組みからではなく、これはおかしい、と感じたことを忌憚なく述べたところに、加藤が周囲からの理解されづらい所以があったかもしれぬ。
本年は奇しくも加藤に強い影響を与えた江藤淳の没後20年にあたる。
別稿でも触れる予定だが、それを記念する回顧展(企画展「没後20年 江藤淳展」2019年5月18日~7月15日)が神奈川近代文学館で開催された折、社会学者の上野千鶴子が講演を行った(2019年6月1日)。その中で上野は江藤をして「戦後批評の正嫡」としているが、「ポスト江藤淳」として加藤の名を挙げている(上野千鶴子「講演 戦後批評の正嫡」/『新潮』2019年9月号・p.189)。正にその通りである。
先年、たまたま東京でも相当大規模な書店に行って驚いたことがある。江藤淳の書籍がほとんどないのである。まさに焼き払われたとで思わせる根絶のされ方だった。加藤の事跡もそのような事態にならぬことを心から祈るばかりだ。
今回のこのラジオ番組が、加藤典洋という、まさに「最後の文芸評論家」を我々がより一層知る機縁となって欲しい。
🐦
2019/08/17
15:12
0 件のコメント:
コメントを投稿