遍 歴 ~109~
『アナと雪の女王』試論の覚え書きのようなもの
『アナと雪の女王』試論の覚え書きのようなもの
2018年1月9日(火曜日) 晴れ 比較的暖かい
あれほどもう止めようと思っていたNTに入った。人間的に問題がある、としか言いようがない。
1月2日からずっと13時間労働だったので疲弊した。立ち仕事なので、座って立ち上がろうとするとき、あるいは寝ていて起き上がろうとするとき、足腰に異様な疲労物質の存在をありありと 感じる。
本日休み。
6時前には目が覚めていたが、起き上がれず。10時過ぎに寝たままYoutubeで音楽を聴く。心が癒される。「アナと雪の女王」の主題歌「Let it go」を何種類か聴いて滂沱の涙。
松たか子歌うところの日本語版「ありのままで」が歌唱力、表現力ともに優れているのは言うまでもないが、各国語版と聞き比べてみても松の秀逸さが光る。ここで涙。
ただし、日本語の訳詞については、歌詞としての文学性は素晴らしい。しかし音数も問題もあってか、原詞の強い意味が柔らかな表現に変えられていて、その鋭い主張が減殺されているように思う。
ま、それは一旦擱くとしても、言うなれば、ダブル主人公のひとりエルザは手に触れるものをすべて凍らせる力を持っているが、無論それは外に出すことはできない。あるきっかけで、今までの自分の偽者さに踏ん切りをつけて、人々を元を決然と去り、一人、故絶した山中に赴き、凍り付いた王国を築き、雪の女王となる。その山に入るシーンでエルザが歌うのが、この主題歌「Let it go 」、すなわち「ありのままで」なのである。
実はわたしは映画そのものは観ていないので、あくまでも推測に過ぎない。
さて、一体これは何を意味しているのか。
エルザは雪の女王へと変わる。つまり、変身する。しかしながら、むしろ変身と言うよりも、元の姿を取り戻す。いや、姿を取り戻すというよりも、「ありのままで」よいのだという発見とともに、強い自己肯定感を持つに至る。
世間ではしばしば「変わる」ことが是とされ、それを社会的に、あるいは会社における一つの倫理として強要される。
『アナと雪の女王』が世界的なヒットをしたことは、また、その文脈で分析をせねばならない。
しかしながら、日本の現代社会の文脈に置いてみると、わたしには「奇妙」という言葉しか浮かんでこない。個人的な見解では日本の企業はほぼ間違いなくブラック企業だと考えているが、それは企業の側の問題点だけではなく、労働者の側にも絶大な問題点があると思われる。つまり、日本社会における、このブラック企業の問題は労使の共犯関係なのだ。
会社側は徹底的に会社側に都合のいいように労働者の意識と体質を変える。変わらなければそれは悪であり、場合によってはそれは処分の対象とされる。その社会風土でなぜ「ありのままで」が肯定されるのか? おかしいでしょう。
あるいはこういうことか? 日本人は現実的な否定感を、仮想空間でそれを消費することで解消しているのだ。つまり酒を呑んでうさを晴らすのと同定である。cool Japan とか言っても所詮そんなところなのか。現実を変えることに資さない芸術作品にいかなる意味があるのか。いや。芸術には芸術そのものの意味があるのであろう。現実社会とは別にね。
個人的な感動とは別のところで勝手に社会が動いていくというのは素晴らしいことですか。
日本を代表する社会学者・見田宗介には近代日本における流行歌に表れた様々な心情の分析をした『近代日本の心情の歴史――流行歌の社会史』*がある。
*見田宗介『近代日本の心情の歴史――流行歌の社会史』1967年・講談社/1978年・講談社学術文庫。
社会学、あるいは現代思想の一つの手法としてこのような大衆芸能、大衆芸術、サブカルチャーの分析がある。後者では吉本隆明の『マス・イメージ論』、『ハイ・イメージ論』*等が記憶に残る。
*吉本隆明『マス・イメージ論』・『ハイ・イメージ論』(全3巻)1984年~1994年・福武書店。
しかしながら、このような形で、現実とイメージの世界が分裂していて、その実、現実世界における利益の享受者、あるいは利益の享受者を形成するシステムが、その世界を維持するために、そのガス抜きのためにイメージの世界における「反世界的イメージ」を意識的に形成しているとすればどうだろうか。ウォルト・ディズニー・カンパニーなどはその尖兵なのではないか。
『アナと雪の女王』を観る。「ありのまま」が大切だと感動する。そこでリフレッシュする。翌日会社に行き、前日までの苦しみを忘れ、結局、張り切って仕事に打ち込む。なんか間違ってないか。
いやいや、そんなに大衆は愚かではないとあなたは断言できるだろうか。
しかし、これでは、なにも変わらないのだ。
というわけで、そのあと、マイケル・ジャクソンらによる「We are the world」を観て号泣。
坂本龍一らによる「Zero Landmine」を観る。
1時近くになったのでやむ無く起床する。
昨日のことは続稿で。
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