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プロデューサー榊原信行一人に焦点を当てるべき
金子達仁『プライド』
■金子達仁『プライド』2017年12月15日・幻冬舎。
■長篇ノンフィクション(格闘技・プロレス)。
■2020年8月31日読了。
■採点 ★★★☆☆。
とても面白かった。
ただ少し詰め込み過ぎで散漫な印象を与える。おそらく当初の予定通り、プロデューサー榊原信行一人に焦点を当てて、(あるいは裏方、つまり髙田やヒクソンは置いて、むしろ徹底的に裏方から見た)「PRIDE」という、ほぼ前代未聞の格闘技イベントの盛衰をこそ描くべきだったのだ。その意味では、余計なことを書きすぎなのだ。とりわけ隔靴搔痒の感を与えるのが、石井和義が途中で降りて、プライドが頓挫しかけたときに、如何にして榊原はそれを立て直して、実現まで持っていったのかが、時系列が章を跨いでいるためもあり、いま一つとらえきれない嫌いがある。
また、いわゆる「八百長」問題や、PRIDE崩壊の原因ともなった暴力団との関係の問題、それを言うなら、正道会館館長の石井和義の問題も考えねばならぬが、恐らく現時点では書くのは困難であろうか。
そのような意味でもぜひ続篇、というよりも完全増補版の刊行が待たれる。
類書に、近藤隆夫による『プロレスが死んだ日。――ヒクソン・グレイシーVS高田延彦――20年目の真実 』(2017年・集英社)がある。こちらはヒクソンサイドに立って、プロレスを批判している。
個人的な意見だが、髙田は負けはしたが、PRIDEなくして、現今の総合格闘技という存在すらなかったことを考えると、その功績は相当大きいと考えている。
筆者は本文末尾に猪木・アリ戦との符合について書いているが、むしろ、この髙田vs.ヒクソン戦の源流には、立場の違いこそあれ、木村政彦の力道山戦の「敗北」があると、わたしには思えるのだ。
これについては、本ブログの「「木村政彦は本当に力道山に負けたのか」――増田俊也『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』」を参照して欲しい。
ついでに書いておく。
これは単なる推論、というよりも臆断ではあるが、そもそもPRIDEの崩壊やK-1の衰退に繋がった石井館長の逮捕劇を裏で操った人物は誰か、という問題がある。無論、「反社会的勢力」と繋がることは社会的「悪」であることは論を俟たないが、それで得をした人物はだれなのか、ということである。
それはとても嫉妬深い人物でプロレス界の超大物である。彼にとってはPRIDEもK-1も「友軍」というべきか「同盟軍」のはずだったが、ここに「力道山」の遺伝子なのか、死霊なのかが、彼にとりついたのか、その筋に手を回したのではないか。
結果的には格闘技界は共倒れとなり、彼一人の漁夫の利とはならなかったが、無傷のままでいるのは誰なのか、ということである。
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2020/09/01 0:38

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