広い領野を持つ異貌の哲学者
國分功一郎『スピノザ エチカ』
■國分功一郎『スピノザ エチカ』2018年12月1日・100分de名著・NHK出版。
■テキスト(哲学)。
■2020年1月10日読了。
■採点 ★★★☆☆。
とても面白かった。門外漢でもいっぱしのスピノザ通を気取れること請け合いである。
専門的なことはわたしには分らぬが、恐らく膨大なスピノザの思想世界から必要なポイントを的確に抽出していると感じられた。
とりわけ東洋哲学(イスラーム、大乗仏教などの)との共通部分を感じた。
それからライプニッツとの共通点と相違点が気になった。
📓【note】
・倫理学
□ethos→ethica 倫理という言葉の根源には、自分がいまいる場所でどのように住み、どのように生きていくかという問いがある(p.25)。倫理というのは、自分がいる場所に根ざして生き方を考えていくことだ(p.25)。
・すべてが完全体
□この一般的観念というのは実際には偏見のことです。(p.30)
□すべての個体はそれぞれに完全なのだ(……)存在しているあらゆる個体は、それぞれがそれ自体の完全性を備えている。(p.30)
□自然界に完全なものと不完全なものとが存在しているわけではないのです。
・視点の問題
□同一事物が同時に善及び悪ならびに善悪いずれにも属さない中間物でもありうるからである。(スピノザ『エチカ』第四部序言・本書p.31)
□自然界にはそれ自体として善いものや悪いものはないけれども、うまく組み合わさるものとうまく組み合わさらないものが存在する。それが善悪の起源だとスピノザは考えている(p.32)。
・力
□「コナトゥスconatus」は、個体を今ある状態に維持しようというとして働く力のこと(p.39)。
□ある物が持つコナトゥスという名の力こそが、その物の「本質essntia」であるとスピノザが考えている(p.40)。
□関係/超越←外部←形=道徳⇔倫理=力→内部→内在 (p.40)
□私たちは神という実体の変状であるというのがスピノザの答えです。(下線部原文は傍点・p.56) cf.井筒俊彦『イスラーム哲学の原像』など。
□水は水としては生じかつ滅する。しかし実体としては生ずることも滅することもない。(スピノザ『エチカ』第一部定理一五備考・本書p.56)
□私たちを含めた万物は、それぞれが、神が存在する様式であると考えられます。(下線部原文は傍点・p.57)
□デカルトの「心身二元論」vs.スピノザの「心身並行論」(p.60)
□スピノザの「反復的契約説」(p.64)
・自由
□与えられている条件のもとで、その条件にしたがって、自分の力をうまく発揮できること。それこそがスピノザの考える自由の状態です。(p.67)
□必然性に従うことが自由だ(p.68)。
□自由であるとは能動的になることであり、能動的になるとは自らが原因であるような行為を作り出すことであり、そのような行為とは、自らの力が表現されている行為を言います。(p.79)
□スピノザの自由とは自発性のことではありません。(下線部原文は傍点・p.81)
・真理
□実に、光が光自身と闇とを顕すように、真理は真理自身と虚偽との規範である。(スピノザ『エチカ』第二部定理四三備考・本書p.96) つまり真理の基準は真理自体である。
□真の観念を獲得していない人には、真の観念がどのようなものであるのかは分からないということであります。(下線部原文は傍点・p.103)
□あえて問うが、前もって物を認識していないなら自分がその物を認識していることを誰が知りえようか。すなわち前もって物について確実でないなら自分がその物について確実であることを誰が知りえようか。(スピノザ『エチカ』第二部定理四三備考・本書p.104)
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2020/01/12
22:40

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