「人は考えるのではなく、考えさせられる」
國分功一郎監修・NHK『哲子の部屋』制作班『哲子の部屋 Ⅰ 哲学って、考えるって何?』
■國分功一郎監修・NHK『哲子の部屋』制作班『哲子の部屋 Ⅰ 哲学って、考えるって何?』2015年5月30日・河出書房新社。
■TV番組の書籍化・鼎談集・啓蒙書(哲学)。
■2017年9月8日読了。
■採点 TV番組としては★★★☆☆ 書籍としては★★☆☆☆
入門書としては、そうとう考えて作られていて、とても分かりやすい。ただ、価格*と比べると内容が薄い**のが残念。三巻本で発売されているが、合本で1800円ぐらいが妥当ではないか。
*1058円。
**101頁。
テーマとして掲げられている「人は考えるのではなく、考えさせられ
る*」というのは大変興味深い。人は普段は日常生活を「習慣化」して機械的に行動して、深くは考えなくて済むようにしている。しかし、突如として、何らかの不測の事態がやむを得ず人は考え始めるのである。すなわちジル・ドゥルーズの言葉に従えば「思考の最初にあるのは“不法侵入”」**ということになる。
*「させられる」に傍点。
**ジル・ドゥルーズ『差異と反復』/本書77頁より援引。
問題はこの外的な不測の事態によって、「考えさせられる」という点が、必ずしも「受動的」な態度とは言えず、この「させられてしまう」というところに何らかな「主体的」な態度が見出だせる、というのが、恐らく國分功一郎言うところの「中動態」*ということなのか、と推測する次第である。
*國分功一郎『中動態の世界――意思と責任の考古学』2017年3月・医学書院。本年度小林秀夫賞受賞。
実は、この状況、――突如、なんの脈絡もなしに人に襲いかかる外的偶然を、如何に内的必然と受け止めるか、あるいは必然とまでいかなくても、そこに何らかの倫理性を認めるか、ということと通低するものを感じる。これは別稿「偶然性の倫理学」を参照して欲しい。
2017年9月9日 0:39ー1:50
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