📚讀書ノウト
前作は完璧だが、今作は感心できず
■堀江敏幸『未見坂』2008年10月30日・新潮社。
■短篇小説集。
■2016年11月22日読了。
■採点 ★★☆☆☆。
山間にある、尾名川沿いの架空の田舎町にささやかな生を営む人々を描く短篇連作集である。同様の結構をもつ前作『雪沼とその周辺』*については、現代日本の文学的な達成としては、ほぼ完璧とも、私には感じられたが、今作については余り感心できなかった。その違いを明確な形で指摘することは難しい。
*2003年11月25日・新潮社。
強いて云えば前作のほうがより小説としての構えのようなものを保ち得ていたものが、今作ではそれが崩れ、登場人物たちの生の断面を提示するに止めている、ということか。
しかしながら、それが小説作法としていただけない、というわけではない。
したがってなにがその読後感の差を生むのかがわからない。
個人的には、「滑走路へ」「消毒液」*「未見坂」「トンネルのおじさん」が面白かった。とりわけ、「トンネルのおじさん」は題材的にも興味をひかれた。
*それにしても、この題名はなんとかならなかったのか。
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