🐶長嶋有を読む
読者を選ぶチャレンジングな作品
■長篇小説。
■2016年11月15日読了。
■採点 ★★★☆☆
本書は軽いスタイルで書かれてあるが、作家自身の強い方法論的確信によって裏打ちされた(と思われる)、極めてチャレンジングな作品である。
これが日本の大手日刊紙に連載されていたことがにわかには信じがたい。
と言うのは、ストーリーらしきものはほとんどない、いや、皆無、と云ってもよい。作家自身を思わせる主人公らしき(?)人物の一家が構える山荘にその親族や友人たちが代わりばんこに滞在する。そこでその山荘に代々伝わるオリジナルの遊びを夜な夜な繰り広げる。
ただ、これだけなのである。
黒子を思わせる「久呂子さん」という主人公の友人が語り手として状況の説明を行うが、いわゆる近代小説的な意味での内面はほぼ排除されている*。
*その意味では「表層小説」とも言いうる。
正直に云って、初めの100ページぐらいはこの小説*の面白さが分からなかった。しかしながら、物語(?)の過半に至ると登場人物たちの様子をただ眺めていることに、ある種の面白味を感じることになる。それはこの山荘の遊び**が変すぎて面白いということもあるが、そこに集う人々***の変過ぎさが面白味を誘うのであろう。
*これは小説なのだろうか?
**個人的には「それはなんでしょう」と「ダジャレしりとり」が面白かった。
***電話でしか登場しない引きこもりのヒキオくんとか強い存在感だ。
いずれにしても本書は読者を選ぶ作品だ。
単行本の装画の高野文子さんが素晴らしい。
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