音楽への愛に溢れる
村上春樹『村上ソングズ』
■村上春樹 (和田誠・絵) 『村上ソングズ』2007年12月・中央公論新社/2010年11月10日・村上春樹翻訳ライブラリー(中央公論新社)。
■歌詞の翻訳とエッセイと絵(音楽)。
■2019年10月12日読了。
■採点 ★★★☆☆。
残念ながらここに紹介されている歌を一曲も聞いたこともなかった*ので、そのまま読んでも、ほぼ何のこっちゃ、の世界だった。
*例外はビーチボーイズ(ブライアン・ウィルソン)の「God only knows」だけは聴いたことがあったが、それも村上の紹介で手に取ったわけなので、まー、ほとんど知らなかったに等しい。
これが20年前だったら10ページも読まずしてリタイアとなるところだが、時は変わり21世紀に生きる我々にはYou
Tube(インターネットの動画サイト)という存在があり、ほとんどの音楽はそこで聴くことが可能である。これがいいことかというと、難しい問題だが、いずれにしてもそれによって、一枚一枚とレコードやCDを買い集めなくても、本書で紹介されているものはほとんど聞くことができる。
つまり、元の音楽を聴かずして歌詞やエッセイを読んでもちんぷんかんぷんなのだ。
とはいうものの、ここには村上と、挿絵、というには相当な枚数の絵を載せている和田誠*(奇しくも先日お亡くなりになった。ご冥福をお祈りする次第だ)の歌や歌手、作詞・作曲者への愛が溢れている。
*原本には和田誠の名前がクレジットされているが、翻訳ライブラリー版にはそれがないのはいかがなものか。本書の魅力の相当な割合は和田のカラーのイラストによるところが大きい。何しろ「絵本」かと思うぐらいほぼ全頁にイラストが入っているのだから。
さて、そんなわけで実際に音楽を聴きながら本書を手に取るととても楽しく、かつ、学ぶ喜びに満たされる。
まだ、全部聴いたわけではないが、R.E.M.の「Imitation
of life」がとても心に残った(オリジナルのヴィデオ・クリップもとても面白かった)。
Thats sugarcane that tasted good
Thats cinnamon thats hollywood
C'mon c'mon no one can see you try
(サトウキビは甘くて美味しく
それはシナモン、それはハリウッド
大丈夫、ほんとの君は誰にも見えないさ) (翻訳ライブラリー版・p.25)
特に歌詞に意味はないのかも知れないが、その意味ではそれを訳したからどうということでもないかも知れぬ。
それに関して村上は、彼らが「おそらく意図的に、自分たちの歌っている歌のリリックを明文化しないという突き放した態度を近年までずっと貫いてきた。」と指摘した上で、次のように述べている。
これは、考えてみれば、歌詞の内容をより具体的に、より先鋭的にしていくラップ・ミュージックとは実に対照的なスタンスのように見える。言い換えれば、アメリカ中産階級の白人の若者には、このような象徴的な、示唆的な言語様式でしか自らの世界を語ることができないということなのだろうか。(翻訳ライブラリー版・p.29)
本書は音楽批評ではなく、短いエッセイなので、これ以上のことについては語られていないし、これ以上語っても、それは野暮というものだろう。
しかしながら、この問題については論究に値すると思われる。ぜひ、機会があれば別稿にて。
🐥
2019/10/12 19:23

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