驚嘆に値する
村上春樹『村上春樹 翻訳 (ほとんど) 全仕事』
■村上春樹『村上春樹 翻訳 (ほとんど) 全仕事』2017年3月25日・中央公論新社。
■紹介・対談(英米文学・翻訳)。
■2019年10月7日読了。
■採点 ★★☆☆☆。
1981年に始まり一旦2017年で区切っても、驚嘆に値すると思われる、なんと70冊にも垂んとする村上春樹の翻訳書の一覧、それについての訳者本人のコメント、及び盟友。柴田元幸との翻訳談義を収める。
村上の訳業について、個人的な感想を書き付けるとすると、矢張りレイモンド・カーヴァ―の発見と全作品の翻訳という偉業をおいて他にあるまい。
もしも村上がカーヴァ―を紹介していなかったら、恐らく、日本人の誰もカーヴァ―など読まなかったであろう。
個人的にも心に残る作家の一人となった。とりわけ原型「風呂」とその改稿版「ささやかだけど役に立つこと」にはとても強く打たれた。享年50歳という、あまりにも早い死が惜しまれる。
もう一冊挙げるのであれば連続殺人犯で死刑を受けた実兄ゲイリー・ギルモアについて書かれた、マイケル・ギルモアのShot in the heart (『心臓を貫かれて』)である。恐らく、村上の翻訳書では他の追随を許さぬショッキング度、というのかディープ度というのか、圧倒性については文句なしである。
個人的な感想で言うと、これはアメリカの『カラマーゾフの兄弟』に他ならない。
ところが、逆に、村上が相当な思い入れを込めて訳している、『グレート・ギャツビー』を始めとするフィッツジェラルドの作品、サリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライ』、あるいはカポーティやグレイス・ペイリーの諸作品については、恐らく波長の問題かもしれぬが、わたし個人としてはどうにも面白さが理解できかねるのだ。
なぜだろう、不思議だ。
ま、そういうこともありますよね。
レイモンド・チャンドラーのハードボイルド作品はそれ自体としてはとても面白いとは思うが、翻訳上の問題(主として訳語の選択の問題)でいささかの疑義がある。
あとは、これも当方の知識と経験不足によるものだが、ビル・クロウの『さよならバードランド』や『スタン・ゲッツ自伝』などの音楽ものが駄目だ。読んでも分からない。
しかし、それは音楽を聴けばよいので、今回、訳詞集『村上ソングズ』を読むにあたって、同時進行で元の音楽も聴いて楽しかったので、是非とも、わたし自身の守備範囲を広げていこうと思っている次第だ。
🐧
2019/10/13
0:23



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