沢木耕太郎『キャパへの追走』
■沢木耕太郎『キャパへの追走』2015年5月15日・文藝春秋。
■評伝的エッセイ集・写真集。
■2018年10月22日読了。
■採点 ★★☆☆☆。
沢木耕太郎、問題作『キャパの十字架』*のある意味では取材のなかで生み出されたスピンオフ作品である。
*2013年2月15日・文藝春秋。写真家ロバート・キャパの最も有名な作品に、スペイン内戦に取材した「崩れ落ちる兵士」がある。実はこれが戦場で射殺されたシーンではなく、単に丘の斜面で転んだのだという点と、撮影者がキャパその人ではではなく、恋人であったゲルダ・タローこそがその撮影者であったのではないかという点を実際に現場に赴き、論証しようとした作品である。 沢木はこの作品で2013年 に第17回司馬遼太郎賞を受賞した。また、本書の連載を元にNHK総合テレビジョンで同内容の特別番組が放送された(『NHKスペシャル──沢木耕太郎 推理ドキュメント 運命の一枚〜“戦場”写真 最大の謎に挑む〜』2013年2月3日・NHK総合テレビジョン)。
ロバート・キャパ撮影「崩れ落ちる兵士」
これはこれで筆者にとっては意味のある作品だったであろうが、沢木自身が本来論究すべきことは、キャパ自身が「確信犯」*的に背負ってしまった十字架をキャパ自身がどれほど重く捉えていたかということではないか。
*沢木は、戦後すぐにキャパ自身が出演したラジオ番組の音源※を探しだし、そこでキャパ本人が確かにその兵士が撃たれたと述べていることを指してこう述べている。「間違いなくキャパは確信犯的に嘘をついている……。」と(本書・p.307)。
※「こんにちはジンクス」1947年10月20日・WNBC(ニューヨーク)。
つまり、一枚の写真がいかなるもので、誰がどのようにして撮ったのか、という問題もさることながら、その一枚の写真がどのようにして一人の人間の人生を栄光の舞台に送り届けるのとは裏腹に、死地に赴かせたのか、という点をこそ我々は知りたいのだ。
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2018年10月22日18時57分
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