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2017年10月24日火曜日

これが民意なのか?

これが民意なのか?  




1 これが民意なのか?  

 今般の衆議院議員総選挙の結果について暗澹たる気持ちを持つのはきっと私だけではないだろうと思う。ほぼ予想がついていたにもかかわらず、矢張り実際に数値という結果を目にするに至って、この国はどうかしているのではないかと思わざるを得ない。つまり、これが現在の日本の国民の本当の意思なのか、本当にこれが民意**なのか? ということである。 

 *2017年10月22日実施。465議席中、自由民主党・公明党の連立与党が合計で314議席を獲得し、全議席の3分の2を占めるという「圧倒的な」勝利で終わった。言うまでもなく全議席の3分の2を越えると日本国憲法の「改正」の発議が可能になる。  
 以下選挙に関する数値などのデータは出典を示さない限り『朝日新聞』からの引用である。  

**暫定的に「民意」という言葉を使用するが、わたしが想定しているものとはいささかののずれがある。適切な術語が要求されているが、残念ながら思い付かない。比較的近いかと思われるものに東浩紀の「一般意志2.0」(東浩紀『一般意志2.0――ルソー、フロイト、グーグル』2011年11月25日・講談社)がある。 

 2 体感と違う政治的な実勢  

 というのは、体感で感じている政治的な実勢が今回の結果と全く連動していない、全く一致していないというのが正直なところだ。秋葉原で一国の首相が罵倒されていて、なぜこの結果になるのか。なんらかのブラックボックスがあって、そこで本来あるべき民意が複雑な関数計算を経ることによって捻じ曲がっているのではないか、とすら感じる。 そうは思いませんか?  

3 低い内閣支持率  

 例えば、『毎日新聞』の調査による内閣支持率は6月の時点で36パーセントだったものが、7月22日から23日の調査で26パーセントへと急落している。逆に不支持率は6月時、44パーセントから7月、56パーセントへと急増している。  

*webサイト『毎日新聞』2017年7月23日 16時30分(最終更新 7月24日 02時20分) 

 これを見る限り、今回の選挙結果、公示前勢力を維持する284議席の確保という事態は何をどう考えても異常な事態ではないか。 

 4 得票率と議席占有率のひらき  

 さらに各選挙区、比例区における自由民主党の得票率が48.2パーセントであるのに対してその議席占有率は75.4パーセントとなる。単純な引き算はできないが27.2パーセントもの差が生じている。これを議席数に案分すると126議席となり、今回の議席数からこれを引くと158議席となる。 
  これは流石に、ということであれば、得票率をそのまま総議席数に案分すれば224議席となる。せいぜいこんなところが妥当な数字ではないのか。 そもそも当の安倍晋三首相が衆議院解散に先立つ記者会見において、衆院選の勝敗ラインについて「与党で過半数だ。233議席以上を取りたい」と述べていた 

 *2017年9月25日の記者会見。  

 つまり森友・加計問題に端を発し、小池百合子東京都知事を代表とする希望の党の立ち上げにより、この段階では相当な打撃を被ることを予想しての勝敗ラインの設定だったはずだ。 
 それからすれば、この与党の圧倒的な勝利というのは、おそらくご本人も呆気に取られたというところではないか 

 *「安倍内閣は24日、自民党が大勝した衆院選後初めての閣議を開いた。閣議後の記者会見で閣僚からは「謙虚」に政権運営にあたるとの決意表明が相次いだ。」(webサイト『朝日新聞DIGITAL』2017年10月24日 12:49配信)  

5 野党共闘の失敗  

 さて、この原因については多くのメディアで論じられている通りである。一つには与党の大勝利というよりも、野党の圧倒的な大敗北である。野党第一党であった民進党の三分裂とともに野党共闘の失敗による、いわゆる漁夫の利ということだ。  
 これについては公示前勢力15議席から3倍超の50議席を獲得した立憲民主党についても、大善戦というべきだが、ある一定の責任は免れない。 
  野党共闘といっても民進党の希望の党への「合流」のような数あわせの野合をせよということではない。選挙のときだけ一選挙区に野党の候補者を一人だけ立てればよいのだ。現下の小選挙区制で与党陣営に対して、野党が複数の候補者を立てれば共倒れになることは火を見るよりも明らかだからだ。  
 『朝日新聞』による興味深い試算がある。それによると、今回の選挙で226の選挙区で野党が分散した形で与党とぶつかったが、与党の183勝43敗に終わっている。これがもし野党側が候補者を一本化したとして、その得票率の合算をしてみる。すると与党の120勝106敗となり、なんと63選挙区で逆転が生じるのだ。 

*webサイト『朝日新聞DIGITAL』2017年10月23日21時07分配信。  

 それを今回の結果に当てはめると与党250議席に対して、野党215議席となる。実態はこんなものではないのか。 さらにもし、公明党が連立を抜けたら与党・自由民主党221議席の野党244議席となり与野党逆転が生じるということもついでに言い添えておこう。  

*公明党については別稿を立てて論ずる必要があると思う。明らかに公明党の行動はおかしい。指示母体の創価学会の平和という方針からすると、なぜよりによって安倍内閣と連立を組んでいるのか理解ができない。恐らく指示母体の方針や結党の理念に反してでも、是が非でも政権党にいるということが最大の目的であるとしか考えられない。それは公明党自身の意思ではないのではないだろうか。 

 6 低い投票率  

 さて、さらに言えば今回の投票率の低さである。もちろん大型台風の列島直撃という事態もあったにせよ、有権者の53.68パーセントという戦後二番目に低い投票率であった。 つまり、投票に行かなかったおよそ46パーセントの人々の民意は不明だということになる。 したがって3分の2の大勝利というが、たかだか53パーセントのうちの3分の2に過ぎないのだ。すなわち単純計算で言えば25.87パーセントの信任しか得られていないのだ。 
 そもそも過半数を幾ばく越える程度の投票率は有効なのか。強く疑問を感じる。  

7 小選挙区制というブラックボックス  

 先に述べたが、結局このような事態が起こるのは明らかに小選挙区制に問題があるからだ。一選挙区から一人の当選者しか出ないこの制度は圧倒的な死票を生む。この制度が続く限り、全野党が一致協力して共闘戦略を組まない限りどう転んでも自由民主党の一党独裁は半永久的に不滅であろう。まさにこの小選挙区こそが民意をねじ曲げるブラックボックスに他ならない。  

8 新たなる政治空間へ  

 さて、ながながと述べてきたが、野党共闘の問題然り、議席の案分の問題然り、小選挙区制の問題然り、それは確かにその通りなのだが、実のところわたしが言いたいのはそういうこと(だけ)ではない 

*きっとこれらのことは誰かが既に述べているであろう。 

  そもそも現行の選挙という制度は有効なのか。本稿のテーマは「これが民意なのか?」であったが、すなわち「選挙」という手段を使って民意を反映することはできるのだろうか。  
 おそらく民意、国民の意思、というよりも、一般市民が持ちうる様々の(政治上での)意思は投票所(だけ)にはない。インターネット上でのサイバー空間や職場や学校、あるいは路上、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ショッピングモールにあるだろう 

 *新たなる政治空間がいかなるものかについての詳細は別稿にて論ずる。 

  例えば典型的な例を挙げると、今回希望の党の民進党からの合流メンバーの選別「排除」の問題に端を発して急造で結党した立憲民主党がある。今回の大躍進の裏には通常の地道な選挙運動もあったであろうが、特筆すべきなのが彼らのメディア戦略というか、ツイッターというソーシャル・ネットワーク・サーヴィスを通じてボランティア活動や街頭の集会を動員していったことだ。 
  現状でいうと自由民主党のフォロワーが13万人であるのに対して、立憲民主党のフォロワーは19万人にも及ぶ。 驚くべき数字だが、それよりもなにより特筆すべきは、適切に運用されていて、新しい形の「公共空間」「公共圏」が形成されつつあるということだ。 
 もちろん、ツイッターに参加し、使いこなすということについては世代による差が生じるのは言うまでもないが、携帯電話なりスマートフォンが手元にあれば誰でも手軽に参加することができる。  
 そして、「東京大作戦」などの名称で一般聴衆を駅前などに動員をかけているが、これは先の震災・福島原発事故に発する大規模なデモンストレーションの経験が生きていると言えよう。  

 選挙制度そのものを否定すべくもないが、いずれにしても、民意はそこ(だけ)にはない、こんなことで国民の意思が図れると思ったら大間違いだ、と強く断言しておきたい。 


2017年10月23日 11:43-10月24日 23:12 
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