↗加藤典洋を読む↗
力作だが、「新旧」という立論に疑問
■加藤典洋『批評へ』1987年7月20日・弓立社。
■短篇評論・書評集・長篇評論(文学・思想)。
■2016年10月27日読了。
■採点 ★★★☆☆
本書は、批評家・加藤典洋の二冊目の著書である。
前半部分には短篇の批評や書評を収め、後半部分には書き下ろしの長篇評論「新旧論」を収める。
結論からいうと、これは二分冊の分けるべきだった。
前半にも見るべきものはあるが、問題は後半の「新旧論」だ。
小林秀雄、梶井基次郎、中原中也を論じたこの評論は大変な力作だと云って過言ではない。
それぞれの作家論、作品論として読めば、優れた創見が端々に見られる。
しかしながら、問題はこれらの三つの論文がほぼ独立した形で存在し、「新旧」というテーマで結びつけるのは無理があることにある。そもそも、「新旧」という立論の意味が、少なくとも、私には理解できない。強いて言うのであれば、「誤解」について、ということではないか。
いずれにしても、個々の論文が大変興味深く書かれているだけに残念である。
・オフサイドの感覚 p.9
・デカルトの森の比喩 p.264
・江藤淳『自由と禁忌』p.76
・小林秀雄の躓き 『本居宣長』の削除修正、「私小説論」の削除 p.305 p.495
・他者 自己 江藤淳『小林秀雄』 p.379
・小林秀雄の戦争 「戦争について」p.470
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